2012年8月30日木曜日

宮城 被災地でのワークショップと子供たち


8月22日~23日と宮城県の亘理へ小学生のワークショップを行って来ました。

8月頭にも下見で訪れた被災地域、亘理町は仙台から常磐線に乗り約40分ほどの場所で、仙台中心部の都会的イメージとは逆に穏やかで緩やかな時間の流れる印象でした。

亘理駅周辺は大きな被害も見えず、のどかな田舎町です。
宇都宮大学、長谷川先生と現地で待ち合わせ、その後案内の元、被災した地域を見に行きました。長谷川先生は大学での授業などで忙しいにもかかわらず、時間を見つけては私の活動の協力をしてくれて、いつもとてもお世話になっています。亘理には昨年より何度も訪れ、学生たちとボランティア活動、地域の再建活動を行っており、今回は学生たちによる小学生の勉強の手伝い、交流、ダンスのワークショップなど発案、そして以前より被災地でワークショップをしてみたいと話していた私を誘ってくれました。

亘理の中心より車で数分走り、だんだんと半倒壊した建物や、折れ曲がったガードレールなどが現れます。津波の到達した範囲が倒壊の大きさで感じられました。

海の傍は、元から住宅など何も無かったかのごとく、海沿い一面に雑草の生えた空き地が広がり、残っている建物も3階部分まで到達した跡が残っていました。高いところは7~10mの津波が押し寄せ、距離ではなんと沿岸から6km程先迄到達した場所もあったそうです。家の土台や、塀の無くなった後が分譲地のような景色に思わせます。瓦礫の撤去が進み、特定の場所に集められ、表面的には片付け自体進んではいる印象ですが、残る傷跡から受ける震災の質感はやはり身に強く迫るものがあり、想像を絶する出来事が現実に起きたリアリティが広がっていました。

そこから海沿いに相馬市の方へ向うと建物の土台が見え隠れする草原の中に、所々剥げたコンクリートのホームが残る常磐線の山下駅がありました。亘理駅から先、常磐線は不通となっています。山下駅の線路は今はありません、そのあたりは日本一直線の続く線路だそうで、おそらく線路であった先へ続く空間は、遥か遠く独特の草原が続くだけでした。

その先にある中浜小学校は校舎の2階上部分まで水にのまれたしるしが青いラインで記されていました。(ちなみに校舎は海抜2~3mの高さに建っています。)校内隣には原形を留めない車の保管場所として積まれており、校舎の向こうには波しぶきが上がり、ドーンと岩に波が打ち付ける音が繰り返し響いています。大半の車はキーが刺さったままつぶれていました。

震災の時、生徒達は最上階にある用具室に避難をし、先生の指示で津波を見る事を避けて終息を待ち続けていたということでした。先生の機転の効果は大きいと思います。高台に避難した人々中には津波の押し寄せる衝撃的な景色が忘れられず、海へ近づくことのできなくなった子供が多いと聞きました。それにしても津波の及ぼす”音”の中、用具室での暗闇を寒さに震え朝まで過ごした情景は私の想像の及ばないものです。

改めてすべてを元に戻すことは不可能だと強く感じました。



亘理町にある逢隈小学校は、プールの倒壊や、校舎の亀裂はあるものの海沿いに比べて被害も少なく、同地区の津波により被災した荒浜小学校へ校舎を間貸ししています。

1日目は逢隈小学校の子供達へのサマースクールでのワークショップからでした。サマースクールはダンスのほかに、勉強の手伝い、自然を肌で感じるネイチャーゲームや染物など宇都宮大学の学生さんたちによるプログラムがいくつかあり、どれも子供たちの自主性を育成する目的で構成された素晴らしい内容でした。ダンスにおいては前半が私の振り付けで踊り、後半は参加した逢隈小の先生方とともに振付を創作に挑戦しました。

最初、子供たちは全体的に大人しい印象は受けたものの最終的には笑い声にあふれ、身体を使って表現をする喜びを感じてくれたと思います。こちらから頼んでないのですが、たくさんの先生が参加をしてくれたことはありがたく、さらなる子供たちの喜びにつながったと思います。

夏休みにもかかわらず教師はほぼ平常時に変わらぬ出勤体制ということです。男性教師の一人に「休みはないのですか?」と聞くと「昔とは変わりましたね。」と、微笑んでいました。その言葉は純粋に、我々の”子供時代と現代の教育や教育者の在り方の変化”を指しているのかもしれませんが、先生が子供たちと汗を流し踊る姿を見ていると、”震災前との違い”を表しているようにも感じる、とても意味深い一言に聞こえてきます。

世の中はどんどん大きく変わって来ています。震災前と震災後は全く違います。震災を通して、個人の為の効率化にまみれた現在の生活形態は、資源や電力の過剰消費など我々の麻痺した意識を露呈させました。物質至上ではなく精神の大切さ、又、日々生きているということの大切さをきっと誰もが感じたように思います。


そして考えるべきことは、その先です。




その2へ続く