2014年1月3日金曜日

静岡ワークショップ 老人福祉施設のアウトリーチを終えて

あけましておめでとうございます。
新年早々ですが、昨年末終えた仕事の報告が年内にまとめ切れず、まずはそのご報告から今年は始めたいと思います。

1224日(火曜)、通っていた静岡の老人福祉施設「久能の里」での最後のワークショップを終えました。これは静岡市民文化会館のアウトリーチで、約1年間、月に1~2回のペースで施設へ行ってきました。あまりにも毎月行くのが常であったので、また来週も行くような感覚です。お年寄りの方へ対するWS効果は、私の技量次第で大きく変わってきます。体力面、集中力など考えると、お年寄りの方の一分一秒はとても大切な時間でもあり、このWSはいつも以上に気を張って臨んでいました。1年かけてWSを行うこと自体あまり経験がありませんが、この長さは苦しくもあり、返せばとても充実感を得られるものだと言えます。いやー皆さんどうだったのでしょうか。

私がとにかく見たいのは、内なる躍動が形になることです。世の中と繋がる五感などの「感覚機関」がしっかりと機能し、様々な事象や刺激を吸収し、「表現」となってぐんぐん排出されることです。これはある意味当たり前の人間の営みのことですが、近年人は皆、結構感覚を遮断していたり、吸収しても偏った思考にとらわれたりと、なんだかんだと素直に反応出来ずにいるものです。

WSの初回、まずはミュージシャンのマルケンさんのギター(これがまた素敵なのです)を聞き、何かを感じる。方法は違ってもこれは常に行ってきました。
心が踊っていれば踊りです。
体を動かしたければ動かし、嫌なら動かさない、皆の踊りを見るだけが良ければ見ていればいいし、音楽を聴くだけがいいならただ聞いていれば良くて、ただそれだけなのです。
もし、ただじっとしてその場にいても、その次の機会に、「今回は体を動かしてみようかな」とか「この曲は好きだからちょっと楽しいな」など回ごとの心の変化を大切にすることです。

よっぽどのへそ曲がりでなければ、身体を動かすことに抵抗があっても、心地よさそうに身をゆだねて体を動かしている仲間がいる空間にいること自体は苦にはならないはずです。

一年の間は音楽のイメージを絵にしたり、拾い集めた草木でオブジェを作りそれを持って踊ってみたり、子供たちを連れて行って交流したりと、同じことは極力繰り返さず、誰もが刺激を得られるよう様々なアプローチを行ってきました。
「みかんの花咲く頃」など馴染みある曲で振り付けをし、動きを揃える回もあれば、それぞれバラバラで感じたことを形にする回を間に入れます。

当初はおそるおそる動かしている方、また人の真似をするにとどまっていた方も、様々なアプローチを重ねるに従いそれぞれ生み出すものや反応は日増しに創造性溢れるものとなり、言葉にならなくとも何かを感じ外へ形にしていく姿が増え、そこかしこに目を奪われるようになりました。先日の最終回での発表は、立ち上がって踊れる方は立ち上がり、皆表現はよりそれぞれの内面深く趣あるものとなり、感動した第三者の拍手反応の中で興奮につつまれ、踊り終えた表情はとても輝いていました。

吸収したものを何か形にして排出。その出てきたものをまた誰かが吸収して排出をする・・・それは人間同士のつながりを確認できるとても自然な行為です。「言葉」や「思考」の狭い世界に留まらず、とっとと身体の形に変換するほうが、つながりははるかに簡単なことかもしれないと思います。

お年寄りの方の会話はすごくシンプルで、「楽しい」「〜が好き」「~は疲れる」などで、こちらからの問いかけも複雑な説明などまったく必要としていないことも多々ありました。
しかし会話が成立していなくても「そうですか」と笑えば同じく笑顔が返り、言葉がなくとも足や手をしっかりさすればとても穏やかな表情になります。度合いは違っても、年をとれば皆記憶力は低下していきますが、それは単に個人が生きる上で必要のないことは記憶し無いのだろうと思います。記憶力が低下してもご飯は食べられますし、人と触れ合えばお互いの個人の情報など本来は必要のないことですし。
お年寄りの方たちが大切にしていたのは瞬間の感覚で、理屈よりも先にそこに生きる喜びがあるかどうかという事だと感じます。そして一緒に誰かとその喜びの瞬間を共有することが出来れば、誰かとの間には余計なものはいらないのです。

私自身は先導をする立場でありますが、恥ずかしながらまだまだ余計なものにまみれ、バランスをとるために無理をしている部分が多くあります。お年寄りの方がひとたび瞬間に没頭して身体(心)を動かせば、私に足りない生きる本質を山ほど振りまきます。
それぞれてんでバラバラに踊る事は、自身の内側(心)をさらけ出す行為だと思っています。自身の肯定、老いるということの肯定、生きざまへの肯定。
たくさんの力を頂きました。

まだまだ続けて皆さんが踊って行くことを願っています。
年を重ねた身体だからこそ、見せるべき美しさがあることをもっとたくさんの方に感じていただきたいと願います。

毎回アシスタントできてくれたダイス、レーコさん、ミュージシャンのマルケンさん、記録を取ってまとめてくれた山口さん、野沢さん、文化会館の村松さん、中村さん、前田さん、竹田さん、JCDNの神前さん、佐東さん、手伝いをしてくれたムサシ君、女神の皆さん、千代田小学校の子供たち、チズさん、映像のナカノデザインの皆さま、ひとまずは疲れ様でした。久能の里の佐藤さん、職員の皆さま、ありがとうございました。本当にたくさんの方それぞれが自身の役割を持ち協力し合うとても素晴らしい時間でした。
その場に加わることができた事にこころより感謝をいたします。

ちなみにWSの様子は冊子とドキュメンタリー映像として、現在まとめています。2014321日静岡文化会館でのシンポジウムにて上映し、今後は市民へのダンス芸術によるWS効果の一例資料として配布、公開する予定です。

本年もよろしくお願いいたします。