2008年12月17日水曜日

秒魂(びょうたま)

我が家より駅に向かう道の途中、障害物もなく、大きく富士山の見える場所がある。
晴れた日は最高で、壮大ですばらしい景色を楽しめる。

壮観である。

富士山を嫌いな日本人はいるのであろうか・・とふと思う。


今回はCM振付の話。


先日久々にCMの撮影現場に行った。
OA前なので詳しくは書けないが、化粧品関連の商品CMである。

去年は、CM、プロモーションビデオ等、マスコミ関連の振付は10数本。
しかし今年は初マスコミ関連の仕事であった。

もちろん単に売れっ子のCM振付師ではないといえば、
それで終わってしまうのだが、舞台公演等先に決まった仕事があり、
依頼があっても出来ず今年は何度か泣く泣く断ってしまっていた。

顔見知りでない、初めて一緒に仕事をするCMの監督さんや
制作会社の場合、一度断ると依頼は遠のく事は当然であり、
ましてやまだ補助金や、スポンサーもまだほとんど付いていない
「ソケリッサ!」では、マスコミ関連の仕事がある場合とくらべると、
大きな収入の差はある事は確かである。

とにかく声をかけてもらいながら断ることは
まったく申し訳ないことであり、心苦しさは残る・・。
どんな些細な仕事であれ、指名される事はありがたい。

書類や作品を期日までに仕上げる等ではなく
そこに自身がいる事が必要である。

本質を求めると、踊りは肉体が現場にいないと成立しない。
効率は良いとはいえないのである、そこが厄介でもあり、
よくいえば儚い。


さて今回のCMの話に戻る、

事前に絵コンテというコマ割された流れのイメージを
絵にしたものが送られて来るが、
今回は打ち合わせもすべて当日の現場である。
この作業パターンも様々で、内容によれば、
前もって監督と打ち合わせをして、振り付けを作って臨む事や、
タレントやダンサーが数回練習、又、特訓を行ない撮影に臨む場合もある。

場所は撮影所。監督、製作、プロデューサー、撮影、
大道具、小道具、美術、衣装、メイク、照明、録音、助監督、クライアント・・
思いつくだけでもこれほどの職種があり、かなりの大人数であり、
映画の撮影とまず変わらない規模である。
お互い顔見知りの場合もあるが、この日まったく初めて会う場合の方が多い。
そこでひとつの作品を作り上げるのである。

監督と挨拶をしてタレントの入る前に打ち合わせをする。
出演者はタレントさん1名、モデルさん3名である。
タレントが商品をかかげモデルが後方に位置しポーズを決める。

ここで自分は何をするか・・商品を持つタレントの商品の持ち方から、
モデルを含んだバランス。
秒数にすれば1~3秒の動きを数カットである。
タレントの立ち方や振り向き方、
そこでの商品の見え方等を数秒におさめるのである。
1秒は短いと思うかもしれないが、手を上げるなり、
横向くなりには結構充分で、画面の1秒は侮れない。

いわゆる踊りでないと見えてしまう動きも、
実は振り付けや監修がCMにはあるのである。

監督との打ち合わせで、まず動きを作る、
ここでは自分の感覚が大きく作用する。
監督のイメージ、商品の見え方、CMコンセプト等。
そこをしっかり踏まえた上で動きを見つけるのである。

例えば女性をターゲットにした商品なら、
力強い男性的な動きをしない、
しかしあえて女性的でない方が面白いのかもしれない・・
又、人間らしくない動きでシャープな商品が見えたり、
又、見た人が真似をしたくなる動きであれば
それだけ商品のネームバリューにも関わるかもしれない
タレントのイメージから逆にシンプルも面白い・・

きっと頭の中は瞬間にこのような感じである。
だが考え込まず1分もしないで作る。

実際監督が気に入っても、タレント側の話し合いが必要になる。
出来ない場合、不得意な身体の使い方では無理が判る。
その場合次の動きである。これも数秒で決めるのが良い。

今回も事前に決めた動きをやめて、違う見せ方にして、
本人の得意な身体の流れを利用し作り変えた。
自分も妥協せず、良い動きでタレントのエネルギーは
格段増えたのではあるが、ここは結構核となる部分で、
こちらの提示する動きでないと全くつまらない時もある。
身体を動かすことに抵抗がある場合、
見たことのある動きに収まる傾向がある。


初めて16年前に某テレビ局のCM振り付けをした時、
綿密に作り上げて用意をした振り付け以外を現場で
監督に求められた時に、20分ほど考え込んでしまった思い出がある。
その時は踊り手によって動きを変える、
柔軟な考え方が全く出来なかった。
現場は自分を待つわけである・・

その苦い経験は今に大きく影響している。

最近その監督からは2度の依頼があり、それは感激であった。
もちろん当時より成長は見せられたかと思うのだが・・


とにかく現場状況での集中力が必要だが、
瞬間に作り出す作業は面白い。
その作業を数秒に凝縮し、
そこに自分の色や痕跡も必ず入れ込んでいくのである。

さらに感服するのはスタッフの手際の良さ、
本当に自分の仕事に誇りを持ち楽しんでいる職人である。
商品やタレントがとにかく最高に見える為、
よくするため全員が魂を注ぐのである。

世の中で流行っている事を取り入れるようでは、
あまり良い結果を生むとは思えない。
やはりそのCM自体が新しい流れを作り出すべきであり、
いかに限られた制約と数秒間で何かが発揮できるかどうかが大事だろう。

テレビ画面からどのくらいのエネルギーが届くのか・・

恐らく数秒の裏ではたくさんの熱意が・・
なんていちいち思わないし、
興味がなければチャンネルを変える瞬間でもある。
しかしそこでいかに社会が興味を引くか、
大人たちは集まって数秒の瞬間の為に熱く励むのである。



この時間の使い方、効率の追求は、
今の社会全体の時間の使い方に似ているような気がする。
ただちょっと違うのは、それぞれが向けている
エネルギーの方向だけかもしれない。




そういえば昔のテレビで、CM中チャンネルを勢いよく変えて、
ぽろっとダイヤルが取れてしまった事があった・・






今回はこの辺で・・

告知
「魔法遣いに大切なこと」
中原俊監督 山下リオ主演

劇中振付けしたので映画内容含め是非ご覧ください。
12月20日公開予定。

■「家族愛~カゾクアイ~」
企画 演出 出演 アオキ裕キ

自分の教えている子供達と作品を作ったので興味のある方は御観劇下さい。

日時:12月25日(木)19時~(開場は30分前)
開場:町田フォーラムホール
チケット:2000円

パフォーマンス
石崎珠愛 伊地知恵実 今井あかね 大橋知佳 岡純子 
岡田夏海 落合あずさ 小宮山愛梨 渋谷里音 杉山優奈
 須原葉子 土谷咲子 露木菜々子 仲原舞 西島花純 
松岡広大 松田璃紗子 /ROCKy 瀬戸カオリ 小倉圭子 小倉誠

問合せ:ダンススタジオウップス 042-726-8788

インドでの映像とトークあり。
家族で楽しめる作品となっています。
まだ若干のチケットはあります、是非お早めにお求め下さい。

※宮崎による代理投稿。執筆はアオキ裕キ

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